1. 店舗とECで同じ商品が別商品になる理由
店舗では「24AW-041」、ECでは「24AW041-BK」、倉庫ではJANコードで管理している。
このように、同じ商品の呼び方やコードが部門ごとに違う会社では、黒のMサイズが何点売れ、どこに残っているのかを集計する前に、各データが同じ商品を指しているか照合しなければなりません。
商品名の表記が違うだけなら、担当者が読み替えれば済むように見えます。
ところが、色コード、サイズコード、販売価格、仕入先まで別々に登録されていると、ECの売上が店舗在庫から減らない、値下げ後も一部の売場だけ旧価格が残る、SKU別の販売実績が二つに分かれるといった問題へ広がります。
商品マスタは、店舗、EC、倉庫、本部が同じ商品を同じものとして扱うための基準表です。
ただし、項目を増やせば問題がなくなるわけではありません。
誰が新商品を登録し、価格や販売期間を変更した際にどのシステムへ反映し、廃番後のコードを再利用しないかまで決めなければ、きれいに作った商品マスタも数か月で使いにくくなります。
そこで、この記事では、商品マスタの意味から、アパレルで登録する項目、作成手順、更新ルール、システム移行前の確認事項までを順に説明します。
2. 商品マスタとは?SKU・商品コード・JANコードとの違い
商品マスタとは、自社が扱う商品について、商品コード、商品名、品番、ブランド、色、サイズ、販売価格、仕入先などを登録した基準データです。
受注、発注、仕入、入出庫、POS売上、EC掲載、在庫照会、売上分析では、この基準データを参照して対象商品を特定します。
ECの商品説明文や画像を集めただけの一覧とは役割が異なります。
商品マスタに登録したコードや区分は、売上伝票へどの商品を記録するか、倉庫からどのSKUを出荷するか、月次でどのブランドへ売上と原価を集計するかにも使われます。
そのため、登録内容が間違っていると、一つの画面だけではなく後続の伝票や帳票にも誤った情報が渡ります。
| 言葉 | 表すもの | アパレルでの例 |
| 商品マスタ | 商品を登録・更新する際に参照する項目と値のまとまり | 品番、商品名、ブランド、シーズン、色、サイズ、上代、原価、仕入先 |
| 商品コード・品番 | 商品または型を識別する社内コード | 同じ型のシャツを表す「24AW-041」 |
| SKU | 在庫を数量管理する最小単位 | 「24AW-041・黒・M」と「24AW-041・白・M」を別々に管理 |
| JANコード | POSや物流で商品を読み取るための識別コード | タグのバーコードを読み取り、対応するSKUを呼び出す |
商品マスタはこれらを置き換える言葉ではありません。
商品コード、SKU、JANコードがどの商品を指すのかを関連付け、さらに販売や仕入に使う属性を持たせるのが商品マスタです。
なお、SKUの分け方を詳しく確認したい場合は、SKUとは?在庫管理で使う最小管理単位の考え方で説明しています。
言葉の違いを押さえた後は、どの項目を商品マスタへ持たせるかを決めます。
アパレルでは、商品を識別する項目だけでなく、販売時期や価格、仕入条件まで後続業務に影響します。
3. 商品マスタに登録する項目
商品マスタの項目は、他社の一覧をそのまま写しても使いやすくなりません。
そのため、自社で商品を登録した後、どの伝票、画面、外部システムがその情報を使うのかをたどり、必要な項目を決めます。
| 項目のまとまり | 登録例 | 使う業務 |
| 識別情報 | 商品コード、メーカー品番、商品名、JANコード | 商品検索、受発注、POS読取、倉庫検品 |
| 分類情報 | ブランド、部門、アイテム、カテゴリ、シーズン | 予算管理、売上分析、在庫消化、帳票集計 |
| SKU情報 | 色コード、色名、サイズコード、サイズ名 | 色・サイズ別在庫、配分、棚卸、EC在庫表示 |
| 取引・価格情報 | 仕入先、上代、仕入価格、原価、税区分(軽減税率区分) | 発注、仕入、売価変更、粗利計算、月次処理 |
| 販売期間・取扱区分 | 販売開始日、販売終了日(店頭投入日など)、販売停止、継続・廃番 | EC公開、予約販売、セール、旧品番の取扱い |
| 商品掲載情報 | 商品画像、商品説明、素材、取扱注意 | EC商品ページ、店舗の商品照会、問い合わせ対応 |
ここで迷いやすいのが、登録できる項目をすべて必須にすることです。
素材や画像はEC掲載で必要でも、倉庫の入出庫には不要な場合があります。
反対に、倉庫で使うJANコードをEC担当が更新する運用にすると、誰が正しい値を持っているのか分からなくなります。
そこで、各項目に「入力担当」「承認担当」「利用先」「変更可能な時点」を付けます。
価格項目も一つにまとめない方が安全です。
上代(定価)、仕入価格や原価、そして実際の店頭売価は、使う処理も反映日も同じとは限りません。
そこで、項目名だけでなく、どの価格を、いつから、どの販売先で使うのかまで決めると、価格改定後の照合作業を減らせます。
とくに店頭売価は、商品マスタの上代とは別に、店舗ごと・適用日つきで管理するのが安全です(値下げの反映日を売変日として持つ、といった分け方です)。
4. アパレルの商品マスタを作る手順
商品マスタの作成は、コードの桁数を決める作業から始めません。
代わりに、商品登録後に行う受発注、店舗配分、EC掲載、倉庫出荷、売上分析を並べ、どの項目を共通で使うかを先に決めます。
コード体系だけを先に作ると、後からブランドやシーズンを追加した際に桁が足りず、既存コードの変更が必要になることがあります。
| 手順 | 決める内容 | 確認方法 |
| 1. 利用先の洗い出し | POS、EC、倉庫、受発注、会計、分析で使う項目 | 現在の画面、CSV、帳票から項目名を集める |
| 2. 管理単位の決定 | 品番単位とSKU単位のどちらへ持たせるか | 色・サイズ違いで値が変わる項目を分ける |
| 3. コードと入力ルール | 桁数、採番方法、使用文字、欠番、再利用の可否 | 新商品、追加色、後継品を例に採番する |
| 4. 登録・承認の担当 | 誰が入力し、誰が価格や分類を承認するか | 登録依頼から公開までの担当者を時系列で並べる |
| 5. 後続処理のテスト | 登録内容が各システムで同じ商品として扱われるか | 受注、入荷、POS売上、EC掲載、返品まで通して試す |
テストでは、標準的な新商品だけでなく、追加色、上代変更、セット商品、販売停止、返品といった変更も通します。
新規登録が成功しても、既存商品の色追加で別品番が作られたり、販売停止後もECへ公開されたりするなら、日々の業務では手直しが残ります。
具体的には、MDが品番、ブランド、シーズン、上代を入力し、商品登録担当が色・サイズとJANコードを追加した後、EC担当が画像と説明文を登録する流れが考えられます。
このとき、EC公開日より前に店舗へ商品データを配信するのか、入荷実績が立ってから販売可能にするのかまで時系列で決めておくと、「商品は届いたのにPOSで呼び出せない」「ECへ商品ページは出たが在庫を販売できない」といった待ち時間を減らせます。
また、商品コードへブランド、シーズン、カテゴリなどの意味を詰め込みすぎると、分類変更のたびにコード変更が必要になります。
人が見て判別しやすいコードは便利ですが、変更されやすい属性は別項目で持つ方が、後から分類を直しやすくなります。
5. 登録・更新ルールが崩れる4つの箇所
商品マスタの不備は、商品登録画面だけを見ても見つからないことがあります。
というのも、登録した情報が店舗、EC、倉庫へ渡った後に、売上や在庫が別々に集計されて初めて気付くためです。
| 崩れる箇所 | 起きる問題 | 先に決めること |
| 新商品・追加色の登録 | 既存商品を複製した際に旧価格や旧シーズンが残る | 複製できる項目と毎回入力する項目 |
| 店舗・EC・倉庫への配信 | BK、ブラック、09などの表記が分かれ、同じ色を集計できない | 基準コードと各システムの変換表 |
| 売価・原価の変更 | 一部店舗だけ旧価格で販売され、粗利集計にも差が出る | 適用日、対象店舗、承認者、変更履歴 |
| 販売停止・廃番 | EC掲載や発注候補に旧商品が残り、誤受注や誤発注につながる | 停止後に残す履歴と利用を止める処理 |
具体的には、本部が「ブラック」で新色を登録し、EC側が同じ色を「BK」として手入力した場合、商品ページは問題なく公開できるかもしれません。
ところが、ECの売上データを基幹システムへ取り込む際に色コードが一致しなければ、黒の販売実績が別の色として集計されます。
その結果、在庫が減らない原因を調べる担当者は、受注データ、商品CSV、倉庫の入出庫履歴を突き合わせることになります。
この照合作業を減らすには、入力ミスを注意喚起するだけでは足りません。
商品マスタの基準コードを一つ決め、外部システムで別コードを使う場合は変換関係を残すことが先です。
さらに、変更履歴へ変更前後の値、適用日、承認者を残せば、月次で売上や原価がずれた際に対象期間を絞れます。
6. Excel・基幹システム・PIMで管理する範囲
商品数が少なく、商品情報を使う担当者も限られている間は、Excelの商品マスタでも運用できます。
一方で、店舗数やECモールが増え、同じ商品情報を複数のシステムへ配信するようになると、最新版のファイルを誰が持っているか分からなくなり、更新漏れが起きやすくなります。
| 管理方法 | 適している範囲 | 注意すること |
| Excel | 商品数と更新者が少なく、外部連携も限定的 | 同時編集、最新版、入力規則、変更履歴の管理 |
| 販売管理・基幹システム | 商品情報を受発注、仕入、在庫、売上、原価へ使う | 外部POS・EC・WMSとのコード対応と更新時点 |
| PIM | 説明文、画像、素材情報などを複数チャネルへ配信する | 在庫・価格・取引情報をどのシステムから受け取るか |
このうち、PIMは、ECやカタログへ出す商品説明、画像、仕様などを管理する仕組みで、Product Information Managementの略です。
一方、販売管理・基幹システムは、受発注や在庫、売上、原価で使う商品コードと取引情報を持つ役割が中心になります。
したがって、両方を利用する場合は、商品コードをどちらで新規発行し、名称や画像、価格をどちらから配信するかを項目ごとに決めます。
管理方法を決めた後は、移行する商品データを選びます。
この作業では、古い商品マスタをそのまま新システムへ入れない方が安全です。
まず、現行の基幹システム、POS、EC、WMSから商品データを出し、商品コード、JANコード、品番、色、サイズを横に並べます。
その後、重複コード、空欄、使っていない区分、同じ意味の表記揺れを洗い出し、新システムへ持ち込む値を決めます。
また、移行対象の判定では、現在販売している商品、在庫だけが残る商品、返品を受ける可能性がある商品、過去実績の参照だけに使う商品を分けます。
たとえば、廃番商品を新規受注や発注では選べないようにしながら、過去の売上伝票では商品名と原価を表示できるように残せば、不要な再登録を防ぎつつ前年実績も比較できます。
最後に、移行テストでは、件数が合うかだけでなく、代表商品を使って受注から売上まで通します。
具体的には、通常商品、追加色、セール対象、廃番予定の4種類を登録し、POS、EC、倉庫で同じSKUが呼び出されるかを見ます。
Excel在庫管理からシステムへ移す処理の分け方は、アパレル在庫管理をExcelで行う限界でも説明しています。
7. Creative Vision.NETで商品情報を販売・在庫・分析へつなぐ方法
弊社のCreative Vision.NETでは、商品コード、商品名、メーカー品番、ブランド、上代、仕入価格、原価など、アパレルの販売管理で使う商品情報を商品マスタへ登録できます。
さらに、商品画像の登録、CSVデータの取込・出力、色マスタを使った色・サイズ展開にも対応しています。
登録した商品情報は、商品照会だけで終わりません。
CV.netでは、受注、発注、仕入、店舗配分、在庫、売上、商品別分析へ同じ商品コードを引き継ぐため、商品登録後に部門ごとのファイルへ同じ項目を入力し直す作業を減らせます。
ブランド別、商品別、色別、SKU別に売上と在庫を見る際も、商品マスタの分類が集計条件になります。
ただし、現行の商品コードや色・サイズの持ち方は企業ごとに異なります。
弊社は導入前に、現在使っている商品マスタ、POSやECへ渡すCSV、商品登録から販売開始までの流れを確認し、標準項目へ移す値と個別に調整する値を分けます。
その際、コードの変換が必要な外部システム、価格変更の承認、廃番後に残す履歴も見積の前提へ含めます。
既存の商品データに重複や表記揺れが多い場合は、移行前にすべてを一度に直すより、販売中の商品、在庫が残る商品、履歴参照だけ残す商品に分ける方が現実的です。
この場合、初期導入で移す対象を絞りながら、過去売上とのつながりも残せます。
CV.netの商品マスタ機能については、Creative Vision.NETの商品マスタ・各種マスタ紹介でもご覧いただけます。
8. まとめ:最初にそろえるのは商品コードと更新責任
商品マスタを作る目的は、商品一覧をきれいにすることではありません。
店舗、EC、倉庫、本部が同じ商品を同じコードで扱い、登録した情報を受発注、在庫、売上、原価へ正しく渡すことです。
最後に、ここまでの内容から、作成・見直しで外せない点を3つにまとめます。
- 基準となる商品コードを一つにすること:POS、EC、WMSで別コードを使う場合も、どのコードが同じ商品を指すかを変換表で残すこと。
- 登録項目を後続業務から決めること:商品名や画像だけでなく、受発注、配分、在庫、価格変更、分析で使う項目と管理単位を確認すること。
- 更新する担当者と適用日を残すこと:新商品、追加色、売価変更、販売停止のたびに、誰が入力・承認し、どのシステムへいつ反映するかを決めること。
見直しに着手する際は、最初から全商品を調べる必要はありません。
まず、直近で登録した商品を20件ほど選び、基幹システム、POS、EC、倉庫のデータを横に並べます。
商品コード、JANコード、色、サイズ、売価の不一致を一覧にすれば、「新商品登録時の色コード」と「売価変更の適用日」のように、先に直す項目と担当者を具体的に決められます。
この記事の執筆・編集

株式会社ディー・ティー・ピー
システム営業部 編集チーム
株式会社ディー・ティー・ピー システム営業部 編集チームは、アパレル・小売企業向け基幹システムの専門チームです。
販売管理、在庫管理、受発注、配分、出荷、棚卸、売上分析、顧客管理を含むシステムの販売と導入を支援し、300社以上の導入実績があります。
商品マスタの項目と登録・更新ルールを確認し、店舗、EC、倉庫で同じ商品情報を使うための業務運用を支援しています。