1. 店舗に在庫があるのに、取り置きを受けられない理由
「ネイビーのジャケットを9号と11号で1着ずつ、土曜日まで取り置けますか」と電話を受けたとします。
店舗スタッフがPOSで調べると、自店には9号が1着あり、11号はありません。
一方、近隣店舗には11号が1着あります。
この時点では、まだ「2着用意できます」と回答できません。
自店の9号は取置登録が必要であり、他店舗の11号については販売可能な商品か、店間移動に出せるか、土曜日までに受け入れられるかを確かめる必要があります。
店舗在庫管理で扱うのは、各店舗にある商品の総数だけではありません。
指定された色・サイズがどの店舗にあり、そのうち何着を販売・取り置き・店間移動に使えるかをSKU単位で記録し、お客様へ渡せる日まで回答できるようにします。
この記事では、店舗在庫管理の基本として、売場、バックヤード、取り置き、返品確認中の商品をどのように分けるかを説明します。
さらに、販売、取り置き、返品、店間移動、棚卸で数量を更新する時点と、店舗スタッフ・店長・本部の誰が入力や承認を担うかを取り上げます。
2. 店舗在庫管理とは?接客に使える数量を分ける業務
店舗在庫管理とは、店舗にある商品について、SKU、保管場所、数量、販売可否、数量が変わった処理を記録する業務です。
入荷数と売上数を集計するだけでは、取り置き中の商品や返品確認中の商品まで「在庫あり」に含まれます。
そこで、店舗スタッフが接客に使う数字は、帳簿上の数量から今は販売できない数量を除いて考えます。
| 店舗で分ける数量 | 何を表すか | 接客時の扱い |
| 実在庫 | 売場・バックヤードなど、店舗内に実物がある数量 | そのまま販売可能とは限らない |
| 取り置き中 | 来店予定のお客様向けに確保した数量 | 期限切れや解除まで他のお客様へ約束しない |
| 返品確認中 | 汚れ、破損、タグ、付属品を確認している数量 | 良品判定が終わるまで販売しない |
| 破損・修理保留 | 販売せず、修理・返品・廃棄の判断を待つ数量 | 販売可能数から除く |
| 移動中(空中在庫) | 店間移動で出荷済み、受入前の商品数量 | 受入店舗が検品するまで販売可能数に含めない |
| 販売可能数 | 店舗が新たな販売・取り置きに使える数量 | 問い合わせ回答の基準にする |
売場とバックヤードは、商品の所在を探すための区分です。
一方、取り置き中や返品確認中は、その商品を販売できるか判断するための区分になります。
店舗内に実物があるという理由だけで両者を同じ在庫として扱うと、スタッフは取り置きや返品受付のたびにメモと商品を照らし直すことになります。
販売可能数を使うには、店舗にある総数から何を除くかを先に決めます。
次に、在庫3点と表示された商品の内訳を使い、接客に使える数量をどのように出すかを見ていきます。
3. 在庫3点が販売可能1点になる内訳
販売可能数から除く在庫区分は、各社の取り置き・返品ルールによって変わります。
ただし、店舗の問い合わせ回答に使う場合は、実在庫から、すでに使い道が決まっている数量と販売可否が未確定の数量を除く考え方が基本になります。
販売可能数の考え方
店舗の実在庫 − 取り置き中 − 返品確認中 − 破損・修理保留 − ほかの注文へ確保済みの数量
※店間移動の出荷後から受入前までの商品は、空中在庫として別に記録し、出荷元・受入先のどちらの販売可能数にも含めません。
黒Mの実在庫が3点あり、1点は取り置き、1点は返品確認中だとします。
取り置き品は別のお客様へ約束できず、返品確認中の商品も汚れや付属品を調べるまで販売できません。
したがって、新たな販売や取り置きに使えるのは残り1点です。
| 内訳 | 数量 | 販売可能数に含めるか |
| 売場にある良品 | 1点 | 含める |
| バックヤードの取り置き品 | 1点 | 取り置き解除まで含めない |
| 返品受付後の検品待ち | 1点 | 良品判定まで含めない |
| 販売可能数 | 1点 | 新たな販売・取り置きに使用 |
ここで注意したいのは、バックヤード在庫を一律に販売不可へしないことです。
バックヤードにある良品は、スタッフが取り出せるなら販売可能数に含められます。
一方、売場に置かれていても、展示品の汚れを確認している商品や取り置き札が付いた商品は、新たな販売に回せません。
実在庫と販売可能数の違いを詳しく確認したい方へ
在庫引当の記事では、実在庫から受注や出荷へ使う数量を確保し、有効在庫を算出する考え方を説明しています。
店舗の取り置きに加えてEC受注や卸受注も差し引く場合は、有効在庫の計算式と引当を反映する時点までご覧ください。
4. 【具体例】黒Mを2点取り置きたいと依頼された場合
お客様から電話で「黒Mを2点、夕方まで取り置いてほしい」と依頼された場合を考えます。
店舗スタッフがPOSで調べると、自店在庫は3点です。
しかし、内訳を開くと、売場の良品が1点、別のお客様の取り置きが1点、返品確認中が1点でした。
このまま自店在庫だけで2点を約束することはできません。
スタッフはまず、売場の1点を新しい取り置きとして登録します。
残る1点については、既存の取り置き期限が切れているか、返品確認が終わる見込みがあるかをその場で都合よく判断せず、別店舗の販売可能数を照会します。
近隣店舗に販売可能な黒Mが1点あれば、移動指示または取り寄せ依頼を作成し、受入予定を踏まえてお客様へ回答します。
他店舗にも販売可能数がなければ、1点だけ確保できることを伝え、入荷予定や別カラーを案内します。
画面上の3点ではなく、自店で確保できた1点と、他店舗から取り寄せられる1点を分けて回答するため、後から数量を訂正する可能性を抑えられます。
| スタッフの手順 | 確認・登録する内容 | お客様への回答 |
| 1. 自店在庫を照会 | SKU、実在庫3点、取り置き1点、返品確認中1点 | まだ2点あるとは回答しない |
| 2. 自店の1点を確保 | 顧客、期限、担当者、保管場所 | 自店で1点確保したと伝える |
| 3. 他店舗を照会 | 販売可能数、移動可否、受入予定日 | 2点目を用意できる日を伝える |
| 4. 受取・解除を反映 | 売上、期限切れ、キャンセル、移動受入 | 不要な確保を残さない |
この流れで詰まりやすいのは、在庫照会そのものより、取り置き期限が切れた商品を誰が解除するかという部分です。
解除されないままなら、実物は売場へ戻っていても販売可能数は増えません。
反対に、期限前に解除すれば、先に約束したお客様へ商品を渡せなくなります。
5. 数量をずらさない更新時点と担当者
入力が漏れていなくても、更新時点がそろっていなければ店舗在庫はずれます。
同じ商品でも、売上、取り置き、返品、店間移動では、販売可能数から外す時点と戻す時点が異なるためです。
店舗スタッフと本部が別の時点を基準にすると、双方が入力していても数字は合いません。
| 商品が動く処理 | 数量を更新する時点 | 担当者が残す内容 |
| 店頭販売 | POSで売上を確定した時点 | SKU、数量、売上取消の有無 |
| 取り置き開始 | 商品を確保し、顧客・期限を登録した時点 | 顧客、期限、保管場所、担当者 |
| 取り置き解除 | 期限切れ・キャンセルを確認し、商品を売場へ戻した時点 | 解除理由、解除日時、商品所在 |
| 返品受付 | 返品数を受け入れ、販売保留へ移した時点 | 返品理由、検品担当、良品判定 |
| 店間移動 | 出荷元で移動出荷し、受入先で検品・受入した各時点 | 移動伝票、出荷数、受入数、差異 |
| 棚卸調整 | 差異理由を確認し、承認後に調整した時点 | 実数、帳簿数、差異理由、承認者 |
返品商品は、店舗へ戻っただけでは再販売できません。
タグや付属品がそろい、汚れや破損がなく、販売価格も正しいと確認した後で販売可能在庫へ切り替えます。
受入と良品判定を同じ操作にすると、確認前の商品まで販売可能数に加わり、返品数が多い店舗ほど問い合わせ回答を誤りやすくなります。
また、店間移動では、出荷元から減った商品を受入先へすぐ加えると、輸送中の紛失や数量違いを捉えられません。
移動出荷から受入までの数量は移動中として分け、受入店舗が実物を確かめてから自店の販売可能数に加えます。
店間移動の対象商品を決める方法は、在庫移動の最適化で詳しく説明しています。
入荷・返品・移動で在庫差異が続いている方へ
入出庫管理の記事では、入荷、出荷、返品、移動、棚卸のどこで数量が変わったかを伝票から追う方法を説明しています。
店舗ごとの更新時点を決める前に、どの入出庫伝票から差異を調べるかまでご覧ください。
6. 店舗と本部でそろえる在庫ルール
すべての店舗へ「在庫を正しく入力してください」と伝えても、判断基準はそろいません。
たとえば、取り置き期限を当日閉店までとする店舗と翌日までとする店舗があれば、同じ時刻に同じ商品を照会しても販売可能数が変わります。
本部は、店舗スタッフが迷いやすい処理について、開始条件、解除条件、記録項目を決めます。
- 取り置き:誰の依頼で、何時まで確保し、期限切れを誰が解除するか
- 返品:受付後にどこへ保管し、誰が良品・不良品を判定するか
- 破損・修理:販売不可に切り替える条件と、修理後に販売可能在庫へ戻す条件
- 売上取消:商品が店舗へ戻ったことを確認してから在庫を増やすか
- 移動受入:伝票数と実物が違う場合、受入を止めるか差異登録するか
ルールを決める際は、通常どおり処理できた日だけを基準にしません。
取り置き期限を過ぎても来店しない、返品商品に汚れがある、移動伝票より1点少ないといった例外で、誰が在庫区分を変えるかまで記載します。
例外時の担当者が決まっていれば、店舗スタッフが独自のメモを増やさずに済み、本部も差異理由を店舗へ聞き直す範囲を狭められます。
| ルール表に入れる項目 | 記載例 |
| 処理名 | 取り置き開始、取り置き解除、返品受付、返品良品化 |
| 数量が変わる時点 | 顧客と期限を登録した時点で販売可能数から除く |
| 入力担当 | 受付スタッフ、検品担当、店長 |
| 例外と承認 | 期限延長は店長承認、返品不良は本部へ連絡 |
| 履歴 | 更新日時、担当者、伝票、変更前後の数量 |
この表は、ベンダーへ渡す確認項目にも使えます。
製品資料の「店舗在庫管理機能あり」だけでは、自社の取り置きや返品を処理できるか判断できません。
取り置き登録、期限解除、返品保留、受払履歴について、使用する画面、入力担当者、必要な権限を質問します。
7. CV.netで在庫照会から取置登録・移動指示まで進める
弊社のCreative Vision.NETでは、在庫問合せ画面で商品と店舗を指定し、各店舗・倉庫の実在庫と有効在庫を検索できます。
照会した商品を引き継いで他店舗向けの移動指示を作成できるため、別の帳票へ商品コードを入力し直す手間がありません。
7.1. 店頭で在庫照会・取置登録・移動指示まで進める
スマートフォン対応のCVSSでは、店舗スタッフが商品バーコードを読み取り、自店・他店舗の在庫を店頭で照会できます。
さらに、取置登録や他店舗への移動指示も同じ端末から行えるため、接客を中断してバックヤードのPCへ戻る回数を減らせます。
黒Mを2点求められた例であれば、スタッフは自店の販売可能な1点を確保し、他店舗の有効在庫から2点目の取り寄せ可否を調べます。
その場で移動指示まで作成すれば、「在庫があるか電話で確認してから折り返す」という待ち時間を短くできます。
7.2. 受払履歴から数量が変わった処理へ戻る
店舗の在庫数が実物と合わない場合、現在庫だけを修正すると、同じ処理で差異が繰り返されます。
CV.netの商品別受払表や倉庫別受払表では、仕入、売上、移動などによる在庫の増減をたどり、特定のSKUがいつ、どの伝票で、何点動いたかを調べられます。
これにより、本部や店長は「在庫が1点足りない」という結果だけでなく、売上取消、移動受入、棚卸調整のどこから調べるかを絞れます。
差異の原因が入力時点なのか、検品なのか、伝票の未確定なのかを分けたうえで、店舗ルールや権限設定を見直します。
7.3. 自社の取り置き・返品処理を打ち合わせで再現する
店舗在庫の区分や取り置き期限は、企業によって異なります。
そこで弊社との打ち合わせでは、「取り置きを登録し、期限切れで解除する」「返品商品を検品し、良品だけ販売可能在庫へ戻す」といった現行手順を伺い、同じ操作を標準機能で再現できるか突き合わせます。
標準機能で進められない処理が見つかったら、店舗ルールを変えるのか、個別要件として残すのかを決めます。
この切り分けにより、導入後も紙の取り置き票を使う処理や、店舗独自の在庫表に残る項目を見積前に特定できます。
アパレル向け在庫管理システム全体の比較項目は、アパレル在庫管理システムの比較ポイントで説明しています。
8. まとめ:在庫数ではなく、今販売できる数量で回答する
店舗在庫管理で最初にそろえるべきなのは、店舗にある総数と、今販売・取り置きできる数量の違いです。
POSに3点と表示されていても、1点が取り置き、1点が返品確認中なら、新たなお客様へ約束できるのは1点になります。
日々の業務では、次の3点から見直します。
- 店舗在庫の内訳を分ける:売場、バックヤード、取り置き、返品確認、破損保留をSKU別に記録し、販売可能数に含める区分を決めます。
- 数量を変える時点と担当者を決める:取り置き開始・解除、返品受付・良品判定、移動出荷・受入を別の処理として残します。
- 問い合わせ回答から履歴確認までつなぐ:店舗スタッフは販売可能数で回答し、差異が出た場合は店長や本部が伝票へ戻って原因を調べます。
最初からすべての店舗処理をシステム化する必要はありません。
まず、店舗で問い合わせが多いSKUを一つ選び、実在庫、取り置き数、返品確認中、販売可能数を同じ表へ並べます。
その数字を出すために紙や電話確認が残る処理を洗い出せば、店舗の登録ルールを先に変えるのか、標準機能や個別開発で置き換えるのかを決められます。
在庫の所在、数量、販売の優先度、先入先出を店舗ルールへ落とす方法は、在庫管理の4原則で説明しています。
また、店舗在庫をEC販売にも使う場合は、アパレルの店舗・EC在庫連携でEC公開数、引当済み在庫、返品受付後の数量を反映する順番を扱っています。
この記事の執筆・編集

株式会社ディー・ティー・ピー
システム営業部 編集チーム
株式会社ディー・ティー・ピー システム営業部 編集チームは、アパレル・小売企業向け基幹システムの専門チームです。
販売管理、在庫管理、受発注、配分、出荷、棚卸、売上分析、顧客管理を含むシステムの販売と導入を支援し、300社以上の導入実績があります。
店舗スタッフが実在庫・有効在庫を使い分け、在庫照会から取り置き・取り寄せへ進める業務運用を支援しています。