発注残とは?在庫管理と販売管理で見落としがちなポイントと改善策|アパレル業の課題と対策

発注残とは?在庫管理と販売管理で見落としがちなポイントと改善策|アパレル業の課題と対策
導入
「発注した商品がいつ、どれだけ納品されるか正確に把握できていますか?」 「気がついたら人気商品が欠品していたり、逆にセールしても売り切れない過剰在庫に悩んでいませんか?」
このような課題は、多くの小売・卸売業、特にトレンドの移り変わりが激しいアパレル業界にとって、常に頭を悩ませる問題です。その根本原因の一つに、「発注残(はっちゅうざん)」 の管理が適切に行われていないことが挙げられます。
この記事では、アパレル・小売・卸売業の担当者様に向けて、見落とされがちな「発注残」の基本から、それが引き起こす経営リスク、そして具体的な改善策までを、業務システムコンサルタントの視点から分かりやすく解説します。
1. 発注残とは?〜正確な意味と計算方法〜
1-1. 発注残の基本的な定義
発注残とは、一言でいうと「企業が外部の取引先に商品を注文(発注)した後、まだ納品されていない数量や金額のこと」を指します。
発注した商品が全量一度に納品されれば発注残は発生しませんが、生産の都合で複数回に分けて納品される「分納」や、予期せぬ「納期遅延」が発生した場合、この未納品分が発注残となります。
発注残の数量は、以下のシンプルな計算式で算出できます。
発注残数量 = 発注数量 − 納品済数量
1-2. 「受注残」や「バックオーダー」との違い
発注残は、「受注残」や「バックオーダー」といった用語と混同されがちです。ビジネスの現場で誤解を生まないよう、それぞれの違いを正確に理解しておきましょう。ポイントは「誰が誰に対して」の取引か、という視点です。
- 発注残(Backlog of orders): 自社が仕入先に対して発注し、まだ受け取っていない分。仕入・調達側の視点です。
- 受注残: 顧客から注文を受け、まだ出荷していない分。販売側の視点です。
- バックオーダー(Back Order): 在庫が切れている商品に対して、顧客から注文が入っている状態を指します。受注残の一種と考えることができます。
2. なぜ発注残の管理が重要なのか?見逃しがちな3つのリスク
発注残の管理は、単なる事務作業ではありません。その精度が事業の根幹を揺るがしかねない、3つの大きなリスクと直結しています。
2-1. 機会損失のリスク(欠品による売上減)
発注残を正確に把握していないと、仕入先からの納品が遅れていることに気づけません。その結果、「来週には入荷するはず」と立てていた販売計画が狂い、お客様が商品を求めて来店したときに「在庫切れ」という事態に陥ります。これは、本来得られるはずだった売上を失う「機会損失」に他なりません。
2-2. 過剰在庫のリスク(キャッシュフローの悪化)
機会損失とは逆に、発注残の存在を忘れてしまうと、「在庫が少ないから追加で発注しよう」と二重発注をしてしまう危険性があります。その結果、想定をはるかに超える商品が入荷し、過剰在庫となります。
過剰在庫は、
- 保管スペースを圧迫し、倉庫コストを増加させる
- 値下げ販売(セール)を余儀なくされ、利益率が低下する
- 仕入れた商品の代金は支払う必要があるため、手元の資金(キャッシュフロー)を悪化させる といった経営上の大きな問題を引き起こします。
2-3. 資金繰りへの影響
発注残は、まだ納品されていない商品であっても、契約上は「将来の支払い義務」です。
この発注残の総額を把握せずにいると、将来の資金計画に大きなズレが生じる可能性があります。
特に資金繰りが厳しい状況では、想定外の支払いが発生することで、経営に深刻な影響を及ぼすことも考えられます。
3. 【アパレル業界特有】発注残で問題が起きる主な原因
なぜ、特にアパレル業界では発注残の管理が難しく、問題が発生しやすいのでしょうか。それには、業界特有の構造的な原因が深く関わっています。
原因1:慢性的な納期遅延と分納の発生
アパレル業界では、ブランド側が小ロット・低単価での生産を求める傾向が強まっています。しかし、生産工場側は利益を確保するために生産キャパシティぎりぎりまで仕事を受けざるを得ません。その結果、生産が追いつかず、納期遅延や複数回に分けた納品(分納)が常態化しています。これが以下のような「負のスパイラル」を生み出しているのです。
納期遅れ → 小売店での販売機会ロス・消化率低下 → 売上減少 → ブランド側の発注ロット数がさらに減少 → 工場が利益確保のためさらに多くの仕事を受ける → さらなる納期遅れ
原因2:複雑なSKU管理による発注ミス
アパレル商品は、同じデザインでも色やサイズによって商品コードが分かれます。この管理単位をSKU(Stock Keeping Unit)と呼びます。例えば、Tシャツ1型で5色×4サイズ展開の場合、それだけで20SKUになります。 この爆発的に増加するSKUを手作業や目視で管理していると、品番の入力ミスや数量間違いといったヒューマンエラーがどうしても発生しやすくなり、正確な発注残管理を困難にします。
原因3:多チャネル販売による情報の分断
現代のアパレルビジネスでは、実店舗だけでなく、自社ECサイト、ECモールなど、複数のチャネルで販売するのが一般的です。しかし、チャネルごとに在庫管理システムが異なると、在庫情報がバラバラに分断されてしまいます。 これでは、「全社でどの商品が、今いくつ在庫があり、あといくつ入荷予定(発注残)なのか」をリアルタイムで正確に把握することが極めて難しくなります。
原因4:トレンドに左右される不正確な需要予測
アパレル業界はトレンドの移り変わりが激しく、正確な需要予測が難しい業界です。担当者の「勘」や過去の「経験」に頼った需要予測は、外れてしまうことも少なくありません。 予測が外れれば、当然ながら発注数にも過不足が生じます。この発注のズレが、結果として管理すべき発注残の数字も不正確にし、機会損失や過剰在庫のリスクをさらに高めてしまうのです。
4. 発注残の管理方法|Excel管理の限界とシステムの必要性
発注残の管理方法は、大きく分けて「Excelでの手動管理」と「販売在庫管理システムの利用」の2つがあります。それぞれのメリットとデメリットを見てみましょう。
管理方法 |
メリット |
デメリット・課題 |
Excelでの手動管理 |
・追加コストがかからない |
・データ量が増えると動作が重くなる |
販売在庫管理システムの利用 |
・データを一元管理できる |
・導入や運用にコストがかかる |
Excelでの管理は手軽ですが、前述したようにSKUが多く、情報の更新頻度が高いアパレル業界の複雑な業務には、限界があると言わざるを得ません。データの不整合や入力ミスが経営リスクに直結するため、多くの企業が事業の成長段階でシステム導入を検討しています。
5. 販売管理システムで実現する、発注残管理の精度向上策
では、販売在庫管理システムを導入すると、発注残管理は具体的にどのように改善されるのでしょうか。ここでは3つのポイントに絞って解説します。
5-1. データの一元管理によるリアルタイムな状況把握
販売管理システムの最大のメリットは、発注、仕入、在庫、販売といったサプライチェーン全体のデータを一箇所に集約できる点です。これにより、これまで各部門や担当者のPCに散らばっていた情報が一元管理されます。
その結果、「誰が、いつ、何を、どれだけ発注し、そのうち何個が未納品(発注残)なのか」という最新状況が、全社でリアルタイムに共有可能になります。これは、特に「原因3:多チャネル販売による情報の分断」で指摘した、在庫情報が分散する課題に対する直接的な解決策となります。担当者が変わっても情報が引き継がれ、二重発注のような単純ミスを組織的に防ぐことができるのです。
5-2. 適正な発注量の自動計算と発注業務の効率化
優れたシステムは、データに基づいた発注業務を強力にサポートします。担当者が発注量を決める際、システムは以下の計算を自動で行い、適切な数量を提案します。
発注量 = 最大在庫量 − 現在在庫数 − 発注残数
この計算式における「現在在庫数」と「発注残数」を、システムがリアルタイムかつ正確に把握していることが重要です。これにより、担当者の勘や経験に頼ることなく、データに基づいた客観的な発注が実現し、「原因4:トレンドに左右される不正確な需要予測」に起因する欠品や過剰在庫のリスクを大幅に削減します。同時に、これまでデータ集計にかけていた時間も削減され、業務負荷が軽減されます。
5-3. アパレル特化型システムによる高度な在庫・発注管理
汎用的な販売管理システムも便利ですが、アパレル業界の複雑な業務には、やはり業界特化型システムが最適です。色・サイズ別の詳細なSKU管理はもちろん、展示会での受注といった業界特有の業務フローにも標準で対応しているため、スムーズな導入と運用が可能です。この点は「原因2:複雑なSKU管理による発注ミス」を根本から解消するために不可欠です。
例えば、「CreativeVision.net(CV.NET)」のようなアパレル特化型システムでは、色・サイズ別のSKU管理はもちろん、受注・発注・在庫データをリアルタイムで連携させ、正確な発注残を自動で可視化します。これにより、担当者は複雑なデータ集計から解放され、より戦略的な業務に集中できるようになります。
6. まとめ
本記事では、アパレル・小売業界における「発注残」管理の重要性について解説してきました。
- 発注残は、機会損失や過剰在庫に直結する、経営において極めて重要な管理項目です。
- 特にアパレル業界は、慢性的な納期遅延、複雑なSKU、多チャネル化、不正確な需要予測といった構造的な課題を抱えており、Excelなど手動での管理には限界があります。
- これらの課題を解決し、データに基づいた正確な管理を実現するためには、業務に合った販売管理システムの導入が不可欠です。
自社の発注残管理プロセスを一度見直し、どこに課題があるのかを洗い出してみてください。そして、その課題を解決するためのシステム導入を検討することが、激しい市場競争を勝ち抜くための、そして事業を成長させるための確かな第一歩となるはずです。
アパレル・小売業における発注残管理は、単なる在庫数の把握ではなく、
「現場の正確なオペレーション」と「経営判断のスピード」 を支える重要な仕組みです。
株式会社ディーティーピーが提供する 「CreativeVision.net(CV.NET)」 は、
発注・入荷・在庫・販売のデータを一元管理し、リアルタイムでの「発注残」可視化を実現します。
また、サイズ・カラーといったアパレル特有のSKU単位での残数管理にも対応しており、
店舗・倉庫・ECの在庫整合性を保ちながら、欠品・過剰在庫を未然に防止 します。
業務負荷を減らしながら、より正確でスピーディーな発注残管理を行いたい方は、
ぜひ一度、弊社のシステムをご体験ください。