RFM分析とは|小売・アパレル企業が顧客理解を深めるための基本指標と実務活用法
- 1. はじめに:なぜ今、RFM分析が再注目されるのか
- 2. RFM分析とは何か?3つの指標で顧客価値を可視化する
- 3. RFM分析が小売・アパレル業界で特に有効な3つの理由
- 4. RFM分析の実務ステップ:5段階で施策に落とし込む
- 5. RFM分析 × 小売データで実現する“顧客理解の深化”
- 6. RFM分析で生まれる“よくあるつまずき”
- 7. CreativeVision.net(CV.NET)で実現する「商品 × 店舗 × 顧客」の統合分析
- 8. LoyalCustomerVision(LCV)によるRFM分析の高度化
- 9. RFM分析を“使い捨て”にしない運用設計
- 10. まとめ:RFM分析は“顧客理解”の入口であり、運用で価値が決まる
1. はじめに:なぜ今、RFM分析が再注目されるのか
現代の小売・アパレル業界において、顧客データの活用は企業の競争力を左右する極めて重要な要素となっています。
ですが、多くの企業は貴重な顧客データを持ちながらも、それを活かせずに機会損失を生んでいます。
特にID-POSの普及により、これまで把握が難しかった顧客一人ひとりの購買行動が詳細に可視化できるようになりました。
「誰が、いつ、どこで、何を、いくつ、いくらで購入したか」というデータが手に入るようになった今、企業にはそのデータを読み解き、顧客理解を深め、より効果的なマーケティング施策に繋げる能力が求められています。
このような環境下で、RFM分析は顧客を理解するための「最初に身につけるべき分析の型」として、シンプルながらも強力な手法として再注目されています。
では、そのRFM分析とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
基本から見ていきましょう。
RFM分析の基本に入る前に、データ活用の土台となる考え方を整理しておくと、より理解が深まります。気になる方は、先にこちらの関連記事もご覧ください。
2. RFM分析とは何か?3つの指標で顧客価値を可視化する
RFM分析とは、顧客の購買行動を以下の3つの指標で評価し、顧客をグループ分け(セグメンテーション)する基本的な分析手法です。
それぞれの指標の頭文字をとって「RFM分析」と呼ばれています。
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指標 |
指標が示すもの |
この指標からわかること |
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R (Recency) |
最近の購入日 |
顧客の関心度やエンゲージメントの鮮度。値が新しいほど、ブランドへの関心が高い状態と推測できる。 |
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F (Frequency) |
購買頻度 |
顧客のロイヤルティ(忠誠心)。値が高いほど、安定してブランドを支持している優良顧客である可能性が高い。 |
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M (Monetary) |
購買金額 |
企業への収益貢献度。値が高いほど、一回あたりの貢献度が高く、将来のLTVを高めるポテンシャルを持つ重要な顧客と判断できる。 |
これら3つの指標を組み合わせることで、顧客の現在の「価値」だけでなく、将来の「離反兆候」までも読み取ることができます。
RFM分析は、データに基づいた顧客理解の第一歩であり、あらゆるマーケティング施策の土台となる顧客分析の基本です。
このRFM分析は、数ある業界の中でも特に小売・アパレル業界で有効とされています。
それでは次の章でその理由を詳しく解説します。
3. RFM分析が小売・アパレル業界で特に有効な3つの理由
小売・アパレル業界でRFM分析が特に有効とされる理由は、主に以下の3点です。
- 理由1:顧客データが豊富で統合しやすい 多くの企業で会員化が進んでおり、店舗のPOSシステム、ECサイト、公式アプリといった複数のチャネルに分散した購買履歴データを、会員IDをキーとして統合しやすい環境が整っています。これにより、顧客一人ひとりの行動をオンライン・オフライン横断で正確に捉えることが可能です。
- 理由2:施策との連携(アクション)がしやすい 業界の特性上、分析結果を具体的なアクションに結びつけやすい点が挙げられます。
例えば、RFM分析でセグメントした顧客層に対し、以下のような多様な施策を迅速に実行できます。- セールやイベントの案内
- 新作商品の投入告知
- 再来店を促すクーポンの配信
- アプリを通じたプッシュ通知
- 理由3:在庫管理との連動性が高い RFM分析によって「どの顧客層が、どの商品(カテゴリ、SKU)を購入しているか」を把握することは、小売・アパレル業界ならではの大きなメリットに繋がります。このインサイトは、店舗ごとの最適な商品配分や、売れ筋・死に筋を見極めた在庫最適化に直結し、事業全体の収益性向上に貢献します。
それでは、実際にRFM分析を業務で活用するための具体的なステップを見ていきましょう。
4. RFM分析の実務ステップ:5段階で施策に落とし込む
RFM分析を実務で活用するには、以下の5つのステップで進めるのが一般的です。
これは手作業で行う場合の基本的なプロセスであり、その後のセクションで解説するシステム化への道のりの第一歩となります。
- ① データ準備 分析の第一歩は、必要なデータを準備することです。最低限、以下の3つのデータが含まれた顧客リストを用意します。
- 顧客を識別するための情報(会員IDなど)
- 購入日
- 購入金額
- ② R・F・Mの算出 準備したデータから、顧客一人ひとりに対して3つの指標を算出します。
- R (Recency): 分析の基準日(例:今日)から、その顧客の最終購入日までの経過日数を計算します。
- F (Frequency): 分析対象期間内(例:過去1年間)の購入回数をカウントします。
- M (Monetary): 分析対象期間内の合計購入金額を計算します。
- ③ スコアリング 算出したR・F・Mの値を、それぞれ5段階(または3〜7段階)でランク付け(スコアリング)します。例えば、値が大きい順に5, 4, 3, 2, 1とスコアを付けます。
- ④ セグメント分け 算出した3つのスコアを基に、顧客を意味のあるグループに分類します。例えば、「R=5, F=5, M=5」の顧客は「優良顧客」、「R=1, F=5, M=5」の顧客は「離反懸念顧客」といったように、スコアの組み合わせで顧客の特性を定義します。
- ⑤ 施策への落とし込み 最後に、分類した各セグメントの特性に合わせて、具体的なアクションプランを策定します。これにより、画一的なアプローチではなく、顧客一人ひとりに最適化されたマーケティングが可能になります。
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顧客セグメント例 |
Rスコア |
Fスコア |
Mスコア |
施策の方向性(例) |
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優良顧客 |
高い |
高い |
高い |
限定オファー、新商品の先行案内などで特別感を演出し、さらなる関係を深める。 |
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離反懸念顧客 |
低い |
高い |
高い |
過去の優良顧客。再来店を促す特別なクーポンや、アンケートで離反理由を探る。 |
|
新規顧客 |
高い |
低い |
- |
2回目の購入を促すクーポンを提供し、リピート顧客への育成を目指す。 |
基本的なRFM分析に他のデータを掛け合わせることで、顧客理解はさらに深まります。
5. RFM分析 × 小売データで実現する“顧客理解の深化”
RFM分析の結果に、小売業ならではのデータを掛け合わせることで、より立体的で深い顧客インサイトを得ることができます。
- 店舗別での顧客分布の違い 店舗ごとに、優良顧客や離反懸念顧客の割合がどう違うかを分析します。
これにより、各店舗の顧客層の特性に合わせた品揃えや販促施策の最適化が可能になります。 - カテゴリ・SKU・色サイズごとの顧客傾向 「どの顧客セグメントが、どの特定の商品を購入しているか」を深掘りします。
例えば、「優良顧客は高単価なアウターを、新規顧客は手頃な価格のTシャツを購入する傾向がある」といったインサイトが得られます。 - EC購買 × 店舗購買の関係性 オンライン(ECサイト)とオフライン(店舗)を横断して購入する顧客の行動パターンを分析します。
OMO(Online Merges with Offline)戦略を推進する上で不可欠な視点です。 - RFM × 時間軸での分析 季節性や、新作投入直後にいち早く反応する「初速顧客」の動向などを時系列で把握します。
これにより、キャンペーンや商品投入のタイミングを最適化できます。
【分析から導かれる戦略指令の例】
- A店舗(優良顧客中心): 高単価なデザイナーズ商品の売上が好調。限定コレクションを優先的に配分し、さらなる顧客単価向上を目指す。
- B店舗(新規顧客中心): ブランドの入口となるエントリー商品を充実させ、2回目来店を促すリピート施策(クーポン配信等)を本部主導で強化する。
このように、分析結果が具体的な店舗運営や在庫戦略に直結することが、RFM分析を拡張する大きな価値です。
しかし、多くの企業が手作業でのRFM分析の実行でつまずきがちなポイントがあります。
6. RFM分析で生まれる“よくあるつまずき”
RFM分析は強力な手法ですが、導入・運用する際に多くの担当者が直面する典型的な課題が4つあります。これらは、手動での分析プロセスにおける典型的な落とし穴です。
- 会員データが整備されていない そもそも顧客情報が不正確であったり、名寄せができておらず重複していたりすると、分析の精度が著しく低下します。
正確なデータは、あらゆる分析の土台です。 - 購買履歴がシステムごとに分断されている 店舗のPOSデータとECサイトの購買データが別々のシステムで管理されており、顧客を一元的に捉えられない問題です。
これでは、店舗で頻繁に購入している優良顧客が、EC上では新規顧客として扱われてしまうといった事態が起こります。 - 分析だけで終わり、施策に繋がらない RFMスコアを算出して顧客を分類したものの、そこから具体的なアクションプランに落とし込めず、「分析のための分析」で終わってしまうケースです。
分析の目的は、あくまで施策を改善し、成果を出すことです。 - 分析結果が現場に共有されない 本部のデータ分析チームが出したインサイトが、最前線である店舗スタッフに共有されず、日々の接客や店舗運営に活かされない問題です。
データと現場が分断されると、せっかくの分析価値が半減してしまいます。
これらの課題は、商品・店舗・顧客のデータを一元管理できるシステムを導入することで解決できます。
7. CreativeVision.net(CV.NET)で実現する「商品 × 店舗 × 顧客」の統合分析
これまで述べてきた「よくあるつまずき」を解決するソリューションが、基幹システム「CreativeVision.net(CV.NET)」です。
CV.NETの最大の特長は、「販売実績・在庫・店舗データ」と「顧客データ」を一つのシステムで一元管理できる点にあります。
Section 6で挙げた「購買履歴がシステムごとに分断されている」という致命的な課題は、CV.NETのデータ一元管理機能によって根本から解決されます。
その結果、以下のような統合的な分析が実現します。
- 顧客ごとの購買傾向(RFMセグメント)と、商品の売れ筋や在庫状況を掛け合わせた、より深い分析。
- 店舗別の優良顧客層を特定し、その情報に基づいて最適な商品配分や、地域に合わせた販促計画を立案。
在庫分析と顧客分析が繋がることで、「どの商品を、どの店舗に、どれだけ配置すべきか」という小売・アパレル業界にとって最も重要な意思決定の精度が飛躍的に向上します。
これにより、死に筋在庫を減らし、売れる商品を適切な場所に配置するという、収益最大化に向けたデータドリブンな事業運営が可能になるのです。
そしてCV.NETで統合されたデータを活用し、RFM分析をさらに高度化するのが顧客管理システム『LoyalCustomerVision』です。
8. LoyalCustomerVision(LCV)によるRFM分析の高度化
顧客管理システム「LoyalCustomerVision(LCV)」は、CV.NETとシームレスに連携し、RFM分析を自動化・高度化することで、手動プロセスの課題を戦略的な強みへと転換します。
LCVは、CV.NETで一元管理されたID-POSデータを活用し、分析から施策実行までを一気通貫でサポートします。
- RFMスコアの自動算出と可視化
顧客ランク更新(RFM分析用)機能により、日々蓄積される購買データから精度の高いRFMスコアを自動算出。
さらに「RFMクロス分析」機能で顧客分布を可視化し、どのセグメントにどれくらいの顧客がいるのかを直感的に把握できます。 - 分析から施策へのダイレクトな連携 「分析だけで終わり、施策に繋がらない」という典型的な課題に対し、LCVは分析から施策実行までをダイレクトに連携させることで応えます。
分析で作成した顧客セグメントに対し、管理画面から直接アプリのプッシュ通知やクーポンを配信できるため、「分析のための分析」に陥ることはありません。 - 現場での「顧客カルテ」活用による接客高度化 「分析結果が現場に共有されない」という課題は、LCVの
顧客カルテ機能が解決します。
店舗スタッフは、スマートフォンから顧客カルテを開き、お客様の最終来店日や過去の購入商品、ポイント履歴をその場で確認できます。
これにより、「最近ご来店がなかったものの、以前は特定のデザイナーのコートをよく購入されていたVIP顧客」といった情報を元に、画一的ではない、パーソナルな接客を実現します。
LCVの分析結果をCV.NETの在庫管理や商品計画にフィードバックすることで、分析 → 施策実行 → 事業運営の改善というサイクルがシステム上で完結し、データ活用の価値を最大化します。
RFM分析は一度きりで終わらせず、継続的に運用する仕組みを設計することが成功の鍵です。
9. RFM分析を“使い捨て”にしない運用設計
RFM分析を単発の調査で終わらせず、企業の成長エンジンとするためには、継続的な運用体制と仕組みの設計が不可欠です。
そしてこの運用リズムを確立することが、データ活用の「マスター」への道です。
- 定期的なレビューと指標の更新 週次や月次でRFMスコアの変動を確認し、顧客の変化を定点観測します。
「優良顧客が増えているか」「離反懸念顧客にアプローチできているか」などを定期的にレビューすることで、市場や顧客の変化に迅速に対応できます。 - 施策結果のフィードバック 実施した販促施策が、どの顧客セグメントにどのような影響を与えたかを必ず分析します。
例えば、「離反懸念顧客向けのクーポン施策で、対象者のRスコアが改善したか」を検証し、その結果を次のアクションプランに活かすことが重要です。 - 部門横断でのKPI共有 店舗、EC、CRM担当者といった関連部門が、RFM分析に基づく共通のKPI(重要業績評価指標)を持つことで、全社的な顧客志向の文化が醸成されます。
「優良顧客比率の向上」「新規顧客のリピート率改善」などを共通目標とすることで、部門間の連携が促進され、一貫した顧客体験を提供できます。
最終的に、CV.NETとLCVのようなシステム連携によって「分析→アクション→結果検証」のサイクルを自動化・効率化することが、持続的な成果に繋がる最も確実な方法です。
それでは最後に、本記事の要点を振り返ります。
10. まとめ:RFM分析は“顧客理解”の入口であり、運用で価値が決まる
本記事で解説したRFM分析の要点は、以下の3つに集約されます。
- RFM分析はシンプルだが強力な指標 「最近性(R)」「頻度(F)」「金額(M)」という3つのシンプルな指標だけで、顧客の現在の価値と今後の行動予測の基本を捉えることができます。
これは、データドリブンな顧客理解の揺るぎない出発点です。 - 小売・アパレル業界との相性の良さ 豊富な顧客データを活用しやすく、分析結果をクーポン配信や在庫配分といった具体的な施策に直結させやすいため、他の業界に比べて成果を出しやすいという大きなメリットがあります。
- システム主導でサイクルを回すことの重要性 RFM分析の真の価値は、一度の分析で決まるものではありません。
「分析 → 顧客理解 → 商品・在庫・販促への反映 → 顧客の再来店」というサイクルを継続的に回し続ける運用体制こそが、その価値を最大化する鍵です。
そして、このサイクルを一過性のプロジェクトで終わらせず、持続可能な事業運営の仕組みへと昇華させるためには、システムによる自動化・効率化が不可欠です。
RFM分析を実務に落とし込むためのテンプレートやセグメント例は、別記事にて解説しています。
CreativeVision.net と LoyalCustomerVision では、購買履歴・会員データ・在庫データを統合し、 RFM分析をそのまま販促・店舗運営・在庫戦略に活用できます。








